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「本当はもっといいところでメシ食わせてやりたかったんだけどさ」

8月16日の夜、何が楽しいのか布団の中でサカズキの頭を撫で続けていたアルバがぼそりとそう呟いた。
その声に反応して眠りに落ちかけていた意識が浮上しかけたが、定まらない。
アルバと過ごす夜の温度はサカズキにはぬるすぎていつだって夢見心地だ。

「ほら、島の南の方のレストランとかさ。将校御用達なだけあって高いけど美味いし量もあるって」
「……ほうですか」
「料理の代金だけなら出せるけどドレスコードがなァ。ちゃんと仕立てたスーツじゃなきゃ恥かくし……いつかサカズキと行きたいなァ」
「……ん」

サカズキとしては食に大したこだわりなどないのだが、アルバが行きたいなら断る理由もない。
オーダーメイドのスーツを仕立てて、高い靴や時計を用意して。
今のサカズキには難しいが、悩まずともいずれ簡単に手に入れられるようになるだろう。

「三年もすりゃあ、わしがあんたを連れていきますけェ」
「えっ、いや、おれがサカズキの誕生日にって話だぞ?」
「わしが連れて行くほうがはやいでしょう。アルバさんに任せちょったら何年かかるかわかりゃせん」
「ひでェ」

わかりやすく落ち込んだ様子のアルバに穏やかな笑い声を漏らして再度目を瞑る。

「……三年後にゃあわしが連れていきますけェ、十年か二十年かしたら次はアルバさんが連れていってください」

何年待つことになろうが苦ではない。
なにせサカズキはアルバがこうして黙って頭を撫でてくれているだけで満足なのだから。

***

あなたは『未来の約束をする』サカズキのことを妄想してみてください。
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