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お前は本当にかわいいな、というのが恋人であるアルバの口癖だ。
ある程度親しくなった頃からずっとーー付き合う前、気恥ずかしさから過剰に反応して怒鳴りつけてしまったあとしばらくを除けばずっとかわいいかわいいと言われ続けて当初感じていた抵抗はすっかり消えてしまっていた。
別にいまだって自分がかわいいなんてトチ狂ったことを真実だとは思っちゃいないし、かわいくありたいと望んだこともない。
しかしアルバがおれをかわいいと言う分にはからかいでもなんでもなく本心なんだろうと疑わない程度には慣らされてしまっていて。

「家の近くで猫が子供産んでたみたいでさァ〜、たまに子猫が庭に遊びにくるんだけどそれがもうかわいくてかわいくて……スモーカー?」

頬をだらしなく緩ませて話していたアルバが反応のないおれに気づき「どうかしたか?」と不思議そうにこちらを窺ってくる。
それにハッとしてなんでもねェよと返し、咥えていた葉巻を手にとって握りしめた拳でぐいと口元を拭った。
別にどうもしちゃいない。
改めて思い知って動揺しただけだ。
自分がかわいいとは思っていない。
そうありたいとも望まない。
それなのにあの一瞬、間違いなくムッとしてしまった自分に情けなさを通り越して戦慄すらおぼえた。
慣らされていることは承知のつもりでいたが、まさか「おれとどっちが」なんてうっかり口に出しそうになるほど毒されていたとは。