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- ナノ -

友人といえるほど仲がいいわけでもない同期の海兵ボルサリーノに惚れていることが、あろうことかうっかりで当の本人にばれて一週間。
もっと嫌悪されたり避けられたりするかと思っていたのにそういった素振りは欠片もない。
以前と変わらない距離感で接してくれているのはおれがあのときなんとも言えない微妙な空気の中で「告白するつもりはなかったしお前とどうこうなりたいわけでもない」と言ったからか。
そういう、あえて白黒はっきりさせないところも好きなのだが、正直なところここまできたらはっきりとふってしまってほしかった。
告白するつもりがなかったといっても気持ちがばれてしまった以上見て見ぬふりをされるのはキツいものがある。
生殺しだ。
不毛な恋に区切りをつけるためにもさっさととどめを刺してほしい。
というわけでふられること前提、無敵の人となったおれはこれまでとは真逆のスタンスで包み隠さずボルサリーノへの好意をアピールすることにした。
アピールと言っても元々口下手なため思ったことを飲み込まない、というだけの子供より酷い直球勝負なのだが。

***

「……あんた、最近そればっかりだねェ〜」

そうしてことあるごとにかわいいかわいいと口に出すようになったおれに呆れたのかついにボルサリーノがつっこみをいれてきた。
語彙が少なくて申し訳ないがボルサリーノを見ているとかわいいとしか思えないのだから仕方がない。

「ボルサリーノはかわいい」
「オー……わっしには目が腐ってるんじゃねェかとしか思えねェけどもォ〜……まあ、甘いもの食ってるだけで女からは可愛いって言われるもんだしねェ〜」
「おれの場合は欲のある『かわいい』だから女が言うのとは違うけどな」

真っ直ぐに目を見据えたおれから視線を逸らし気まずそうに俯いてなにやら言い訳じみた解釈をぼそぼそと話すボルサリーノにそう言い放つと顔を覆って隠してしまった。
あんたわっしをどうするつもりだよ、なんて、おれが失恋すれば終わる話だというのに。