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つい十年ほど前までトンタッタ族の呪いだと信じられ恐れられていた現象は理由がわかってしまえばなんのことはない、拍子抜けするほど単純なものだった。
海岸沿いから街中に至るまでありとあらゆる所に生えている島固有の雑草。
その雑草の花粉によってアレルギー症状が引き起こされてどうのこうのとマルコに説明を求められた町医者が小難しいことを言っていたが、とどのつまり呪いの正体はただの花粉症だったというわけだ。
何百人に一人の割合で身体が縮んでしまう者がいるものの花が咲くのはごく短い期間、なんなら島を離れてしまえば症状はおさまるため海賊であるおれたちにとっては恐れるほどのものでもない。
小山のような巨躯が猫ほどのサイズに縮むという怪奇現象は速やかに解決し、特にやることもなかったおれは何百人かに一人の体質だったらしい我らが白ひげ、エドワード・ニューゲートを小脇に抱えて散策に繰り出した。
元の大きさが反映されるのかトンタッタというには少しばかり大きいが、それでも普段とは比べようもなく縮んだオヤジの目には普通の街でも新鮮に映るらしく、現在の体に見合った小さな瞳は子供のようにキラキラ輝いている。
楽しそうで何よりだ。

「さて、これからどうする?酒場にでも行こうか?」
「グラララ……そりゃあいい、今なら酒も飲み放題だ!」
「満喫してるなァ、オヤジ」
「あたりめェだろうが。ガキの頃より小さくなるなんざ滅多に体験できるもんじゃねェ」

せっかくだから花が枯れてしまうまで出航を延ばそうと上機嫌に話していたオヤジがふとおれを見上げて悪戯っぽく唇を持ち上げた。
「もう少しいい具合に縮んでりゃてめェも満喫できたんだろうがな」なんて言いながらにやにやこちらを窺ってくる小さなオヤジ。
人形みたいな大きさのくせにその表情はやけに色っぽくて、つまり言葉の意味は、まあ、そういうことだろう。

「…………うーん、まあ…………まあ、ね。小さいなら小さいで楽しみようはあるんだけどね」

花が枯れるまで、満喫していいの?

ひょいと抱えなおして目線の高さまで持ち上げそう尋ねるとしばらくぽかんとしていたオヤジが渋い顔をつくって藪蛇だったかと呟いた。
あまり怖がらせても悪いので藪蛇もなにもオヤジが小さくなった瞬間から考えてましたけど、というのは言わないでおこうと思う。