まず前提として、おれにとってのシャンクスは物語の中の英雄のような存在だ。 神というには近すぎるが同じ人間として扱うには存在の格が違う。 ロジャー船長の元で共に見習いをしていたおかげで周囲からは親しい間柄のように見えるだろうがおれにとってのシャンクスはあくまでも『そう』で、だからその瞬間ーー自分がシャンクスに恋愛感情を抱いていると気づいた瞬間、あまりの衝撃に頭の中が真っ白になった。 「えっ……」 「ん?どうしたアルバ、なんかあったのか?」 自分の感情を受け入れられず、無警戒に寄ってきたシャンクスから後ずさりで距離を置く。 混乱したおれの様子に今度はシャンクスが「えっ」と戸惑いの声を上げたが今はそれどころではなかった。 まるで実の親に対して劣情を抱いたような強烈な違和感と罪悪感。 どうしよう。 シャンクスの顔が、見れない。 「え、おい、アルバ?どうしたんだよ、おい」 「ごめん……おれ……船降りる、かも」 「は!?」 おいまてよ、冗談、冗談だろ、なあおい待てって、まって、やめてくれよ、なあ くるりと踵を返したおれの背をシャンクスの声が追いかけてくる。 その悲痛ともとれる声は焦りに満ちていて、おれは思わず耳を塞ぎたくなった。 だってシャンクスは英雄で、強くて輝いていておれの憧れで。 ーー頼むからそんな、ただの人間みたいな声をおれに向けないでくれ。 |