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「こうして沢山お菓子をもらうといつだったかのバレンタインを思い出すなァ」

昔はよく貰えてたのにお前が嫉妬して全部駄目にしちまうから泣く泣く断ることにしたんだよなァ、なんてしみじみと机に広げた大量の菓子を眺めるアルバにふんと鼻を鳴らす。
ここ数年で急速に海軍に浸透してきたハロウィンというイベントで配られた菓子とバレンタインのチョコレートを同列に語っているあたりこの甘党のデリカシーのなさは相変わらずひどいものだ。
嫉妬も何も、恋人のいる身で明らかな本命チョコを受け取ってくるなど不誠実にもほどがあるというのに。

「一応言っとくけどもォ……あのときのあれは、別に妬いてたわけじゃないからねェ〜」
「へえ、そうなのか?」
「当たり前だろォ〜。わっしはただ目に見えてわかる告白を断らないで相手さんに無駄な期待持たせるような真似したおめェの行動に、人としてどうなのかって怒ってただけだよォ〜」
「そりゃあ残念。というか、まさかお前に人としてのあり方を説かれるとはなァ」
「喧嘩売ってんのかァい?」

だいたい手紙つきの高級チョコやら手紙つきの手作りチョコやらを「嬉しいよありがとう」なんて笑顔で受け取れば渡した方は上手くいったものだと勘違いするに決まっている。
そういうときはぬか喜びさせずきっぱり断ってやるのが優しさだろうに、この男にはそのへんの気遣いや配慮が足りなさすぎるのだ。
なんでお前みたいなのがモテるんだろうねェと恋人である自分のことを棚に上げてぼやいていると適当に笑いながらオレンジの包装紙に黒いリボンという如何にもといったラッピングを剥がしていたアルバが「あ」と声をもらした。
それにつられて視線をやれば、目に入ったのは包装紙の下に隠されていたらしい一つの手紙。
ご丁寧に、シールはハロウィンに似つかわしくないハート型だ。

「ボル、あっ」

何かを言う前にほぼ無意識に体が動き、指先から放たれた光がアルバの手の中にあった手紙と菓子の箱に着弾した。
昔と違ってアルバに怪我をさせることなく標的だけを消し飛ばせたのは長年月の研鑽の賜物だろう。
この状況で実感しても、あまり嬉しいとは思えないが。

「ボルサリーノ……今のは『目に見えてわかる告白』じゃなかったんだから、おれに怒られたって困るぞ」

なんとも言えないにやけ面に腹が立ち、伸ばしたままだった人差し指を向けると慌てて机の上の菓子をかき集めくわばらくわばらと部屋から逃げ出すアルバ。
恋人であるボルサリーノの感情を逆なでするようなことばかりする男だというのに、まったく本当に、なんでこんなやつがモテるんだか。