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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「お前も用意しているだろうが、用心に越したことはないだろう」

朝から元帥に緊急の呼び出しをくらって何事かと駆けつけたら、そんなセリフと共に手渡されたのは大きな袋にみちりと詰まった大粒の飴だった。
普段絶対に公私混同しない人だから仕事の話だと思っていたのにこれはいったいどういうことなのだろう。
しばらく手中の袋を観察し、そして執務机に座っている元帥をじっと見つめると両肘をつき組んだ手で口元を隠していた元帥の目がわかりやすく泳いだ。
どうやら自分でも常にない行動をとった自覚はあるらしい。

「元帥」
「……なんだ?」
「この飴ハロウィン用のものだと考えてよろしいのでしょうか?」
「それ以外になにがある」

去年も苦労していただろうと苦虫をかみつぶしたような顔で吐いた元帥の言う通り、まだおれがセンゴク元帥と付き合う前、地道にアタックを繰り返している最中だった去年以前のハロウィンははっきりいって散々なものだった。
自分で言うのもなんだがおれは顔がいい。
しかもどちらかといえば線が細く中性的。
つまりこの時期おれの周りにはハロウィンにかこつけて女にしてしまえば冗談で済まない"イタズラ"をと考えるアホな男がちょくちょくと湧いてくるのである。
とはいえ、数自体はそこまで多いわけではないし強引な相手には実力でお引き取り願っているのでこんなに大量の菓子を用意する必要ない。
ないのだが、独占欲丸出しな自分の行動に羞恥を覚えてか必死に表情を取り繕いながらも耳を真っ赤にしている恋人の可愛い姿を見ると無駄にするのも気が引けるというもので。

「……ありがたく頂きます。ところで元帥、ご自分用の菓子はお持ちで?」
「いや、私に仕掛けてくる相手など限られているからな。あとであられでも持ってくれば充分だ」
「では今は何もお持ちでないと」
「……?ああ、そうだが」

遠慮のないガープ中将か意外とお茶目なおつるさんか。
なるほど、確かにあの二人なら休憩時間にやってきて茶請けを要求する程度で済むだろう。
しかしその『限られた相手』におれがカウントされていないというのは、信用されているのだと喜べばいいのやら、意識されていないと悲しめばいいのやら。

「センゴクさん」
「なん、」
「トリックオアトリート」

は、と目を見開いて固まる元帥ににこりと笑って机に乗り上げ、飴の入った袋を見せつけてから「今夜はじっくりイタズラさせてもらいますね」と耳元で囁くと一拍おいてぶわりと顔に朱が広がる。
思わせぶりな言葉で自分の贈った飴がどんなふうに使われるか理解したらしい元帥の焦り声を聞きながら、おれは今夜のことに思いを馳せて笑顔で執務室を後にした。