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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

斬り伏せられて意識を失い、辛うじてもう一度目を開くことはできたが感覚のない身体では立ち上がるどころか這うことすらできず、後はもう死ぬしかないだろうなと諦めに近い覚悟をしたおれにふと影がかかった。
ぎこちなく首を動かして上を向くと、地面から随分と遠い位置に海軍帽を被った頭が見える。
あ、サカズキだ、とまるで人混みの中で知人を見つけたときのような緊張感のない感想しか出てこなかったのはすでに自身の死を受け入れた後だったからなのだろう。
まあ、助けてくれなんて懇願したところでサカズキの性格では慈悲の一撃がわりのマグマに飲み込まれるのがオチだ。
わざわざ最期に怖い思いをしたくはないし、それに、サカズキなら気にしないと思うが、どうせ死ぬのに仲間の手を汚させたくはないから、これでいい。

「……なんじゃァ、あの程度の屑ども相手に、随分と情けない格好じゃのう」
「はは……そう、だな」

呂律はまだきちんとしているが掠れきった声ではいまいち聞き取りづらかったらしく、ひょいと片眉を上げたサカズキは地面に耳を近づけようとするみたいにのっそりその場に屈み込んだ。
おれの唇に耳を寄せながらついでのようにびりびりと布を裂き、即席の包帯を作っていくサカズキ。
どんな風の吹き回しかは知らないがどうやら生かそうと思ってくれているらしい。
あのサカズキが、珍しいこともあったものである。

「ああ、最後に食べたのがパサついたレーションなんて、嫌だなァ」
「……あれはあれで美味いと言うちょったろうが」
「ん?あの話聞いてたのか?……あれは、まあ、空腹は最高のスパイスってやつだよ」

おどれの声が大きいけェ聞こえただけじゃというサカズキの言い訳じみた言葉に笑みがこぼれる。
こんなふうに穏やかな会話ができるのならもっとたくさん話をしておけばよかったな、と少し寂しく思った。

「あーあ、なんか美味いもん、腹一杯食いたいなァ」
「……帰ってからいくらでも食やァええ」
「ふかふかのベッドで寝たいし」
「なら寝るのはベッドに入ってからじゃ。今はしっかり起きちょれ」
「恋人……だれでもいいから、付き合ってみたかったなァ」

一瞬固まったサカズキが誰でもいいならわしが付きおうちゃる、と唸るように答えたのを聞いて、ありがとうと返そうとした。
言葉にできたかはわからない。
目の前が急速に黒に塗りつぶされていく。

「サカズキ、」

礼を言いたかった。
呆気ないがそれでも悪くない人生だったと思えたのは、きっと最期に傍にいてくれたサカズキのおかげだったから。























「いやー、まさかあの状態から本当に助かるとはなァ。お前にはほんと感謝してもしきれねェよ!病院のベッドで嫌ってほど寝たし快気祝いで美味いものも食えたし、あとはかわいい恋人ができれば言うことなし……ってサカズキ?ちょ、痛い、痛いってサカズキどうしたんだよおいちょっと、まっ、サカズキ!?」