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別に自信があって告白したわけではない。
どちらかといえば玉砕覚悟で、気持ち悪いこと言うなと拒絶されなければ御の字だとすら思っていた。
けれど告白されたのだと理解した瞬間のエースが見せた恥じらうような表情に「おっ?」と期待してしまったのも確かで、想像してしまった素晴らしい未来と非情な現実との落差におれは死んだ。

「お、おれ……そういうのよくわからねェから」

赤く染まった頬をごしごしと擦って断り文句の定番ともいえるセリフを吐いたエースはそんなときでも――いや、そんなときだからこそ、一層魅力的に見えたのだ。


***


「つーわけでフラれた。結局高嶺の花は高嶺の花でしたとさ」
「あー……いや、でも無理とか嫌いとか言われたわけじゃねェんだろ?ならまだ可能性あるかもしれねェぞ?」
「ねェよ定型文レベルの立派な断り文句だよ。お前だって告白した女に『いまは恋愛する気分じゃないの』とか言われたら可能性あるなんて思わないだろそれと一緒だわ。あーつらいつらい」

おれのあまりのへこみようを察してか、いつもならここぞとばかりにイジってくるサッチが必死に慰めようとしてくれるのが逆につらい。
はぁと溜息を吐いて肩を落とすと神妙なツラで「娼館にでも行くか」とクソのような提案を受けたが、それも悪くないかもしれないと思うおれもヤケクソという名のクソだ。

「よーしじゃあ行くか!お前のおごりな!」
「はあ!?なんでおれが」
「言い出しっぺはお前なんだから責任持てよオニイチャン」

渋るサッチの肩を叩き、かわいい子いるといいなァと空元気で笑っているとふと動きを止めたサッチの視線の先にエースの後ろ姿を見つけた。
すぐに他の家族に紛れてしまったが後ろ姿だけでかわいいとか本当にヤバい。
ただでさえ低かった娼館への期待値が更に下がる。
そりゃそうだ。
エース以上のかわいい子なんて見つけられっこないし、他の女を抱いたって吹っ切れられるはずもない。
それでも家族という繋がりがある以上、どうにか、せめて普段通りに振る舞えるようにならなければ。
おれの独りよがりのせいでエースが気まずい思いをしたらと思うと悔やんでも悔やみきれない。

「……アルバ、なあ、さっきのエースなんかおかしくなかったか?」
「そりゃさっきの今なんだからおかしくもなるだろうよ……おれが普通にしてればそのうち元どおりになるさ」

ああ、つらい。
つらいなァ。
告白なんてするんじゃなかった。