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「この前任務先の島で暇つぶしにペットショップへ行ってみたんだが……おいおい、そんな目で見るなよ。ヒューマンじゃなくて動物を扱ってる正真正銘のペットショップだぜ?」

相変わらずお綺麗なこってと肩をすくめるアルバにそんなこと気にしちゃいないと吐き捨てる代わり、ありったけの非友好的な感情を込めてじろりと睨みつける。
このアルバという男はなぜか表面上そつなくファミリーの仕事をこなしているはずの『コラソン』が犯罪行為を嫌う真人間であると信じて疑わない。
それは正しく真実であり、『コラソン』に隠された『ロシナンテ』の本質を見抜いたアルバの洞察力は時と立場さえ違えば賛辞を送っていたかもしれない慧眼なのだが、命がけで海軍の潜入任務を遂行している最中であるロシナンテからすれば無言で悪事を働き子供に暴力を振るう男にどうして善性を見出すことができるのかと苦々しく思うばかりだった。
唯一の救いはロシナンテがファミリーにそぐわないマトモな感性の持ち主であることをドフラミンゴに伝える気がないというところだろう。
アルバが子供が親に内緒でペットを飼うようなーー実際にはそんな比喩では表現できない悪趣味のためだがーー感覚で口を噤んでいなければロシナンテの綱渡りは今頃ドフラミンゴが繰り出す細い糸の上を歩くようなものになっていたはずだ。
救いといっても、いつ情報を漏らされるかわからない以上アルバが任務を遂行するうえで厄介な存在であることに変わりはないのだが。

「で、そのペットショップにな、ウサギがいたんだ」

ロシナンテの睨みを気にもせずにやにやと嫌な笑みを浮かべているアルバはどうやらまだ話を続ける気でいるらしい。
「金毛で、赤い目が隠れるくらいふわふわで」と続いた言葉に不穏な流れを感じとったロシナンテは忌々しげに目を眇め、紅を引いた唇をぎゅっとひき結んだ。

「全然鳴かねェし見た目の割に気は強いし……そうそう、ウサギって性欲も強いらしいぜ?」

一言口にするごとに詰められる距離。
その距離に慣れてギョッとしなくなった自分にうんざりするが、ソックリだと思わねェかと喉を鳴らしながら伸ばされた手を避けないのはあくまでアルバが「『いい子のコラソン』は若には内緒なんだよな?」と言外に脅してくるからだし、ぞわりと鳥肌が立つのは気持ちが悪いからに他ならない。
耳元で囁かれる声だって本当は能力を使って消し去ってやりたいくらいなのだ。
ロシナンテは海兵でアルバは海の屑。
そう思うのが当然である。

「任務の間おれに会えなくて寂しかったんだろ、ウサギちゃん」

嗜虐心を隠そうともしない視線に身体が震えたのを嫌悪のせいだと言い訳のように繰り返す。
胸をなぞる指先に心臓が跳ねるなど、そんなこと、あっていいはずがないのだ。