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エースの年頃の青少年にあるまじき性関心の薄さに放っておくと数年単位でセックスに至れないのではないかという危機意識を抱き、比較的賑わっている大きな島を前に朝帰り前提のデートを持ちかけた。
強引に宿へ引きずりこまなかったのは向こうにも心の準備が必要だろうという配慮ゆえだったのだが、今になってそんな自身の良識を深く、深く後悔している。

「……なあ、悪かったって」

昨日緊張して眠れなかったんだよ、と視線を合わせないままぼそぼそと弁解するエース。
なるほど、確かに昼間に観光がてら街をぶらついているときも三割り増しでテンションが高かったし、飯の最中だってあれがうまいこれがうまいと騒ぎまくって恒例の居眠りもしなかった。
確かに緊張していたのだろう。
そしてベッドに入り、おれの腕に抱かれた途端緊張の糸が切れて安らかな眠りについたと。
なるほど、わかった、そうかそうか。

「その、あんたに抱かれると、あ、安心、して」
「……相手を性的な対象に見れねェなら最初から付き合わないか、せめてベッドに入る前に別れる方が利口だぞ」
「!ちがっ、そういう意味じゃ、」

溜息をついて首を横に振ったおれになんでそんな話になるんだと焦るエースを見て、なんだかなァとまた息を吐く。
キスすればボッと比喩表現なしに顔から火を出して赤くなるし、昨日緊張で眠れなかったというくらいだからまったく意識されていないわけではないのだろうが。

「……キスだけじゃ、駄目なのかよ」
「おれの歳で頷く男はいねェだろうな」
「うっ……」

怯えたような困ったような恥ずかしいような何とも複雑な表情できょろきょろ視線を泳がせるエースにしばらくして「わかった」と声をかければ俯き気味だった顔がものすごい勢いでバッとあげられた。
何を言われるのかと不安げな、けれど、もしかすると何事もなく穏便に済むのではと期待してもいる潤んだ瞳。
まるきり親に叱られたあとのガキだ。
これでも戦闘のときには頼りになる、同性から見ても格好いい男なんだがなァ。

「おれはこれからもお前をベッドに誘う」
「お、おう」
「お前は寝ても構わん」
「おう?」
「おれはおれで好きにやらせてもらう」
「……おう?」

いまいちわかっていない様子で首をかしげるエースの頭をぽんぽんと叩き、さっさと帰るぞと手を引いて歩き出す。
ようは眠くても眠れないようにしてやればいいのだ。
処女だけは取っておいてやるから自分の体がどうなっても恨むんじゃねェぞ、エース。