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「アルバさん、わっしのこと可愛いって言ったんですってェ〜?」

からかわれちまいましたよォ、と抗議とも世間話ともつかない口調で話しながら報告書を渡してきたボルサリーノに先日酒の肴にそれぞれの部下自慢を繰り広げた面々を思い浮かべて眉を寄せた。
奴ら曰く「お前の部下は絶対可愛くない」らしいが、それはこちらのセリフである。
自分達の癖の強すぎる部下を棚に上げて「得体が知れない」やら「話していると腹が立つ」やら散々言ってくれやがった上官馬鹿二人は何もわかっていないのだ。
ボルサリーノは懐いていない相手に腹を見せないだけで、そんな警戒心の強さもまた可愛いとろだというのに。

「おれァ悪くねェぞ。悪ィのはあいつらの趣味だ。だいたい自分のとこのが一番とか、完全にただの贔屓じゃねェか」
「それに関しちゃあんたも同じでしょうがァ〜。わっしが可愛いなんて色眼鏡の上に相当な悪趣味ですよォ」
「なんだ、嫌か?」
「別に嫌じゃないですけどもォ〜……褒めるなら後々で意見を撤回するなんて格好悪いことしないでくださいねェ」

落ち着かない様子で歯切れ悪く主張してきたボルサリーノに「お前は絶対可愛いしおれはいつだって格好いいんだから撤回なんてするわけない」と胸を張る。
対抗心から口にしただけで本当は可愛いなんて思っちゃいないと言われるのが怖かったのだろう。
おれの言葉に呆れたようにはいはいと苦笑しながらもホッと肩の力を抜いたボルサリーノはやっぱり可愛くて、自分は間違っていないと改めて確信したおれは脳内の同僚に向け勝利を示すようにフンと鼻を鳴らした。