「今年も一年、早かったねェ〜」 「そうだなァ。この歳になると時間が過ぎるのもあっという間だ」 慌ただしく去った年の瀬に恋人と二人、正月と同じように並んで座りこの一年の思い出や愚痴を零しながら互いに酒を酌み交わす。 日頃の血なまぐささとは程遠い温かで穏やかな空間だ。 いつ命を落とすかもしれない職に就いている身でこれほど幸せなこともそうないだろう。 「ああ、そういえば年を越すってことはもう申年じゃなくなるってことか」 「オー、わっしの年はまた十二年後だねェ〜」 「……最後に少しくらい甘えとくか?」 「……オー」 ひょいと広げた両腕にぱちりと目を瞬かせたボルサリーノだったが、否定するかと思いきやしばらくの間の後のそのそと這ってきてぼすりと開いた腕の中におさまった。 いつもなら「馬鹿だねェ〜」と笑って流されるのに、珍しいこともあるものだ。 もしかして暖房の少ない部屋が寒かったのだろうか。 そう思って抱きしめる腕に力をこめるとボルサリーノがおかしそうにくすくすと笑い出し、触れ合う箇所にじわりと熱が伝わった。 「なあ、アルバ〜?」 「ん、なんだ?」 「正月にもわっしの年だからとかって同じようなことを言ってたけどもォ〜……お前さん、申年じゃなきゃわっしのことを甘やかしてくれないのかァ〜い?」 酷い男だねェ、と笑うボルサリーノにしばらく固まり、とんでもないともう一段腕に力を籠めなおす。 おれはどれだけ甘やかしたって甘やかしたりないのに普段我儘も言わなければ甘えてもくれないのはボルサリーノの方で、それなのにまったく、どちらが酷い男なのだか。 |