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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「あれだけ嫌われてるのによく懲りずに話しかけられるな……お前、サカズキ大佐怖くねェの?」

いっそ尊敬するわとまったく尊敬しているようには聞こえない態度で肩を竦めた友人にぱちりと大きく瞬きし、数秒遅れて「え」と声をあげる。
なにやら今ものすごく不思議なことを言われた気がしたんだが気のせいだろうか。

「嫌われてるって、おれが?サカズキに?」
「おま、あれだけ睨まれるわ無視されるわしてて今更なに言ってんだよ!どう見ても嫌われてるだろ!」
「えー……それはないと思うんだけどなァ」

目覚ましい活躍で一足とびに昇進し、たまにやり過ぎて降格され、それを反省した様子もなく戦場で力を振るい続けて先日ついに上官殿と呼ぶべき立場にまでなってしまったサカズキだが、おれにとっては新兵として配属されてからずっと目をかけている可愛い後輩だ。
確かに普段はそっけないしあの強面を更に歪めて睨まれることも多々あるけれど嫌われていると感じたことは一度もない。
どちかといえば、むしろ懐かれているほうだろう。

「アルバ……ポジティブすぎるぞ、お前……」
「ポジティブっていうか――あ、おーい!サカズキー!」
「ちょっ、おい馬鹿!やめとけ!」

友人の制止を振り切って丁度いいタイミングで現れた大柄な後輩を捕まえ「お前おれのこと嫌ってるって本当?」と直球で尋ねてみると、突然の質問に海軍帽の下で目を見開いたサカズキは次の瞬間鬼のような形相でこちらを睨み付けて腕を掴んでいたおれの手を払い、無言のまま大股で歩き去って行ってしまった。
なるほど、友人には『これ』が嫌っているがゆえの行動に見えるのか。

「ほら言わんこっちゃない。つーか後輩っていってももう向こうのが上官なんだから、あんまり馴れ馴れしく話しかけんなよ」
「突然話しかけられると能力の制御が大変だけど距離を置かれるのはどうしても嫌なんだそうだ」
「あのなァ……現実を見ろって。怒らせても知らねェぞ?」

呆れたようにそう言ってそろそろ昼休みが終るからと踵を返した友人は、自分がいなくなった後でサカズキがここへ戻ってくるなんて夢にも思っていないに違いない。
怯えた目で縋るように袖を引いて「嫌っとりませんけェ」と必死に弁解の言葉を紡ぐ不器用な後輩の姿を見ればそんな誤解などしようもないだろうに。