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「なんでそんなもん使うんだよ……意味わかんねェ」

不機嫌を隠さない表情で手元の湯たんぽを睨むエースに苦笑しつつ、沸かした湯から緩やかに立ち昇る湯気を手でぱたぱたと扇いで払う。
どうして湯たんぽを使うのかと聞かれれば、それは当然身体を温める熱源にするためだ。
四季の中でも一等寒い時期に突入した冬島の冷気はもう若くない自分には少しばかり辛いものがある。
そういった事情は一つ前の島で結ばれたばかりの若い恋人も承知のはずで、つまりこの場合の「なんで」という言葉は『どうしてメラメラの実の能力者である自分を差し置いてそんな道具に頼ろうとするのか』という意味に他ならない。
可愛らしい不満だが、そうして不満をぷつけなければ理由がわからないあたりエースはまだまだお子様である。

「お前を抱いて眠れば、湯たんぽよりずっと温かく眠れるんだろうがなァ」
「ならそうすりゃいいじゃねェか。おれ寝相悪くねェし、ちゃんと風呂も入って汗流してくるし」
「うーん……」

じとりとこちらを睨みつけながら返答を待つエースは、おそらくおれと一緒に寝たいというより単純に湯たんぽという道具に自分のお株を奪われたのが気に入らないだけなのだろう。
しかしそれは恋人と一夜を共にするには甘すぎる考えだ。
若い時分から好色でいまも枯れる気配など微塵もないおれが惚れた相手、それも日常的に半裸姿の無防備な恋人を床に招いて、ただ抱いて眠るだけで済むはずがないのだから。

「……まあ、別におれはそれでも構わないが、お前はいいのか?眠れないかもしれないぞ?」

優しさからの忠告を気にもとめずパッと顔を輝かせ、大丈夫大丈夫と軽く答えて機嫌を直したエースになら遠慮なくと今夜の約束をとりつける。
筋肉質とはいえまだまだ線の細い身体で一体どこまで耐えられるやら。
とりあえず明日足腰が立たなくなるのは確実。
このぶんだと湯たんぽのために沸かした湯は、ぐちゃぐちゃになってベッドに沈む恋人を清めてやるのに使うことになりそうだ。