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一兵卒の身でありながら仕えるべき王子に身の程知らずな恋をして、その優しさに触れるたび大きくなる想いに耐え切れずいっそ一思いに切り捨ててほしいと告白したら同情からうっかり交際を受け入れられてしまい、そうしておれはいまなぜか恋人となったフカボシ王子の私室でふかふかのベッドの上に正座させられ懇々と説教をされている。
なぜだろう。
ちょっとわけがわからない。

「地上には釣った魚に餌をやらないという言葉があるそうですが、それはとても酷いことです」
「……はあ」
「釣ったからには責任をもって餌をやるべきでしょう。より親密な関係を築こうというときによくない方向へ態度を変えるなんて、そんなのはおかしい。本末転倒だ」
「はあ……あの、王子」

王子、と口にした瞬間フカボシ王子の眉間の皺が一層深くなり、ムッと口角が下がる。

「私はそういうところを言っているんですよ、アルバ」

何度も名前で呼べと言っているのにいつまでたっても"王子"としか呼ばない。
態度も以前よりよそよそしい。
せっかく恋人になれたというのにどういうことだ。
好きだというなら誠意を見せろ。
王家の威厳を感じさせるいかめしい表情でおれを詰るフカボシ王子に「はあ」と呟いて目を瞬かせると、鋭い瞳の奥に隠しきれない不安の色が揺らめくのが見えた。
わけがわからない。
恋人らしい態度を催促して、曖昧な返事に不安がって、これではまるで王子が本当におれのことを好いたうえで付き合ってくれているみたいじゃないか。
都合の良すぎる憶測にどぎまぎしながら足を崩してそっと大きな手を取ると、フカボシ王子のミルク色の肌がほんのりと赤く色づいた。
そんな馬鹿な。

呆然として思わず「両想いだったんですか」と口にしたおれにこれまで一体どういうつもりで付き合っていたのかと激昂した王子の説教が長々と続いたのは言うまでもない。