レイリーにとってアルバは「まあいいか」で身体を許しただけの特別でもなんでもない男である。 それまで男との経験はなかったが顔を真っ赤にして好きだの愛してるだのと言い募るアルバに嫌悪感は湧かなかったし、海賊のくせをして普段から純情ぶっているアルバがどうやってレイリーを抱くのか興味もあった。 だから抱かれてやった。 それだけだ。 それだけのことを勘違いしてまるで恋人のように振る舞うアルバの束縛はとても面倒で鬱陶しかったがやはり嫌悪感はなかったため放置していた。 つまり真実はどうあれアルバはレイリーを恋人だと思っているはずで、周囲からも二人は付き合っていると認識されているはずで、それならば道端で女をひっかけているアルバを見たレイリーが後ろから近づいて行って無防備な横腹に回し蹴りを入れたことにだって誰も文句をつけたりはしないだろう。 「ぅぐッ!」 「きゃっ!?」 鈍い衝撃ののち少しばかり吹っ飛んで地面に転がったアルバにつかつかと近づき髪を鷲掴みにして立ち上がらせると先程までアルバと話をしていた女が目を丸くしてこちらを見つめてきた。 商売女らしい美しく目を引く顔立ちは正しくレイリーが好みとするところだ。 それがいまは酷く不愉快で、レイリーは隠すことなく顔を歪めた。 「いてて……レ、レイリー?」 「さっさと行くぞ。買い出しの途中で油を売るんじゃない」 チッと舌打ちして髪を掴んだまま引きずるように歩き出すとアルバが痛いだ何だと騒ぎ出したが知ったことではないと歩みを進める。 道を聞こうとしただけだなんて、あんなに近寄っておいてよくもまあそんな下手な言い訳ができたものだ。 じろりと睨みつけるとアルバがやれやれとでもいうような、しかし嬉しげで照れくさそうでもある笑みを浮かべて「レイリーはやきもち焼きだなァ」と的外れな台詞を吐いた。 馬鹿馬鹿しい。 レイリーはアルバの勘違いに付き合ってやっているだけだというのに、まるでレイリーのほうがアルバを束縛しているような馬鹿げた言い方はやめてもらいたい。 |