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「おかしなもんだな」

パーツのバランスだけで考えりゃァそうでもないはずなのに、見れば見るほど。
そう言っておれの頭を掲げまじまじと見つめる船長に「鏡を覗けばもっといいものが見れますよ」と提案すると「自己陶酔の趣味はねェ」と素気無く却下されてしまった。
まるでおれの顔を眺めるのが健全な趣味であるかのような言い方をしているが絵面のヤバさはこっちの方が数段上だ。
没個性気味な顔立ちの生首にうっとりしてるイケメンなんて傍目から見ると洒落にならない。

「船長」

呼びかけると視線がおれのかさついた唇に落ち、船長の口からほうと熱っぽい吐息が漏れる。
最近の船長は能力で切断したおれの首を手に収めベッドやらソファやらでだらだらしながら観察するのにご執心だ。
別にそれが嫌というわけではないのだが、胴体を放置して持ち去られた頭だけでは船長を観察し返すことくらいしかできないためぶっちゃけとても暇である。

「船長、いい加減飽きません?」
「飽きねェな」
「おれそんなに格好いいです?」
「ああ。世間的には中の下ってところだろうが、悪くねェ」
「そうですよね、おれイケメンじゃなくて中の下顔ですよね知ってます」
「……でも悪くねェ」

グランドラインの七不思議に数えてやってもいいと冗談だか真剣なんだかわからない声で呟いた船長の熱い視線にそっと息を吐く。
七不思議もなにもあんたがおれに惚れちまってるだけでしょうと教えてやれば船長は頭を返して身体ごと傍にいさせてくれるようになるのだろうか。
奇行が悪化するような気がしないでもなくて、少し怖い。