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胡瓜の馬であの世から戻ってきて茄子の牛であの世へ帰る。
そんな不思議な風習に倣って子供たちが野菜に楊枝を刺す様を興味深そうに眺めていたシャンクスが誰に告げるともなく「みんな優しいんだなァ」と呟いたのを聞いて、ベックマンは訝しげに眉を寄せた。

「お頭?」
「ん、ああ……おれなら牛は用意しねェなァと思ってな」

そう話すシャンクスはどこか遠い目をしていて、なんとなくだが、きっとあの男のことを考えているのだろうと思った。
あの男ーーアルバはベックマンより少しあとに赤髪海賊団に加わったクルーだ。
心配性で世話焼きで、そんなふうじゃいつか絶対他人を庇って死ぬぞと呆れていたら本当にその通りになってしまった、自由を愛するシャンクスを過保護なまでに束縛しては鬱陶しいと顔を顰められていた馬鹿な男。
わかりやすくシャンクスを好きつつも「おれはお頭に嫌われてるからなァ」と苦笑して関係を進展させることを投げ出していたアルバだが、アルバが死んでからの様子を思い返すに馬鹿なのはシャンクスも同じだったのかもしれない。

「よし、せっかくだからおれたちも格好いいの作ってレッド・フォースに飾ろうぜ!」
「茄子は?」
「いらねェ!」

子供に話しかけて楊枝と新鮮な胡瓜だけを譲ってもらったらしいシャンクスにやれやれと肩をすくめる。
黄泉の国に帰したくないなんて酷い束縛、生きてるうちに見せてやらなきゃなんの意味もないだろうに。