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*中将一年目ぐらいの若クザンと真面目だけど据え膳は逃さないおっさん主人公


「あー…ガープのおっぱいに埋もれたい」

真面目なはずの歳上の部下がぼそりと呟いたとんでもないセリフにクザンはギョッと目を瞠った。

いま、アルバがおっぱいって。
ガープってあのガープさんのことか?
ガープ、さんの、おっぱい?に?えっ?はっ?ええ?

頭の中で意味を噛み砕いて咀嚼しようとするが戸惑いが先行するあまり全く理解が追いつかない。
普段下ネタなど絶対に口にしないアルバが放った一言はそれほどまでに衝撃的だった。
だから、至って冷静な視線をこちらに向けて「どうした」と尋ねてきたアルバに数拍悩んだ後、わりと直球に「あんた、男の胸が好きなの?」と尋ねてしまったのはしかたなかったと思う。
少しばかりデリカシーに欠けるが、それ以外クザンにはアルバの真意を聞きようがなかったのだ。

「男…っていうかなァ…ガープの胸板、厚みすごいだろ。ごついけど力抜いてると結構柔らかいし、思いっきり顔押し付けても女みたいに痛がらねェし、頭撫でてくれるし。なんか安心するんだよ」

センゴクみたいに怒ったりもしねェしな、とぼんやり語るアルバになるほどこの人相当疲れてるなと真顔になった。
それもそうだ。
クザンが時折仕事を放棄するせいで副官であるアルバはいつも疲れた顔をしている。
仕事に追われて草臥れきって、癒し、甘やかしてくれる相手を求めているのだと思うと申し訳なくなると同時、可哀想にという庇護の気持ちがクザンのなかにむくむくと湧いてきた。
アルバはクザンより一回り以上歳上で、真面目でしっかりしている。
けれどアルバはクザンの部下だ。
ここはやはりガープより上官である自分がアルバを甘やかしてやるべきなのではないか。
いや、まあ、疲れの原因が何をと言われたらそれまでなのだが。

「…………おれでよけりゃァ、胸貸そうか?」

暫しの葛藤の末あるはずのない母性本能に駆られて口にした提案に、相変わらずぼんやりとしたアルバは特に反論することもなく「あー、じゃあ、お言葉に甘えて」とふらふらクザンに近よってきた。
一般男性とは比べるべくもないがガープのそれと並べるとやはり見劣りする胸の厚み。
しかしそれを気にもせず素直に頭を預けてきたアルバに、心臓がドキドキと脈を打つ。

「クザン、クザン……終わったらまた頑張るから、今だけ頭撫でて、良い子だって褒めてくれ」

いつになく弱々しい様子で甘えたことを言いながらぐりぐり鼻先を押し付けるアルバになぜか胸がきゅんとして、微かに紅潮した頬を隠すように指示に従うクザンはその鼻先が胸の際どい部分を掠めていることに気づかない。
気づかないクザンに、アルバの唇が弧を描く。
当然だ。
アルバは決して幼児などではなく、クザンより歳上で真面目でしっかりしていて、ついでに強かでズルくて相応の欲を持った大人の男なのだから。

ーーもっとも、クザンがそれに気づけたときにはきっと全てが手遅れに違いないけれど。