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若の足にむらむらしながら徹夜したせいで、もういっそこのままノリで押し切って愛人ポジション狙うのが俺の性癖的にベストなのかもなぁというぶっ飛んだ結論とともに迎えた朝。
昨夜がっついたことを揶揄されるか、それとも武装色の覇気纏って顔面ぶん殴られるかという俺の予想を裏切り若の対応はいたって淡白なものだった。
おはようございますとともに目元にキスをしてみても顔を押しのけて視線を逸らされるだけでそれ以上何があるわけでもない。
ただその表情はいつもの笑顔とは程遠いしかめっ面で、多分というか、まあ、間違いなく怒ってるんだろう。
自分から求めた以上朝一で殺したりするような大人げないことはしないが調子に乗るなぶっころすぞって感じだろうか。
七武海恐ろしい……愛人ポジションとか絶対無理じゃん。
つーかそりゃ無理だよ。
無理無理、なに馬鹿なこと考えてたんだ俺、相手若だぞ?
重い沈黙に徹夜ハイの高揚がサッと醒めて冷静に現実を見る自分が返ってきた。
キスしたのはちょっとフランクな目覚めの挨拶ってことで許してもらいたいなぁ。
うん、唇じゃないしノーカンノーカン。

「じゃー若、俺港の方行く前に一旦部屋戻るんで失礼します。あ、その前にシャワー浴びるの手伝った方がいいっすか?」

散らばっていた服を着なおし、よれている部分を引っ張って整え先程からだんまりを貫いている若に声をかける。
行為中の反応やぎこちなさからして受け身は慣れていない、もしくは初めてだったのだろう。
時間かけてねちっこく丁寧すぎるほどに慣らしたので傷はついてはいないと思うが腰への負担は免れないはず。
こういう場合動けないからといって人を呼ぶのもアレだし、と気を使ったおれに若は青筋を立てて指を動かした。
途端に身体がおれの意志と関係なく動きだす。

「え、ちょっと、若」

勝手に踵を返して扉へ向かっていく足。
必死に首をねじってみても若は何も言わず、こちらを見ようともしない。
扉を開いて廊下を数歩歩きようやく自由が戻ってきたところで、これもしかして本格的に機嫌損ねてんじゃね?と身震いした。
組織のトップに完全無視されるって、殺されないだけマシだけど俺の人生詰んだ気配がぷんぷんする。
降格処分で僻地に飛ばされちゃったりするんだろーか。
もしそうなら若ほどの上物なんて贅沢は言わないけど、なるべく好みの足と巡り合えるような職場でお願いしたいなぁ。
ヒューマンショップに卸すための人魚の捕獲とかだけはマジで勘弁。
だって奴ら足がないんだぜ……?

と、そんなことを考えてそわそわしてたのが二週間ほど前の話。
何も起こらないところをみると若はあの一夜の過ちを水に流してくれたらしい。
降格されることも左遷されることもなくドレスローザの片隅で黙々と仕事をこなし、賭場で遊びながらひっそりと暮らすおれに起こった変化といえば今のところ二つだけだ。
まず一つ目に、若に絡まれることがなくなった。
会っても仕事の報告だけしてそれで終わり。
あんなことがあったのだから当然といっちゃあ当然なのだが、自分から話しかけてきてはお決まりのように面白くないだのつまらないだの嫌味を言って笑っていた若にそういう態度をとられるのは正直堪える。
精神攻撃じゃないかと疑いたくなるほどストレスが酷い。
二つ目に、俺が若の足を見なくなった。
今まで若が視界に入ってるときは大抵舐めるように眺めていたが足フェチだということが露見した以上それは「俺は今あなたの足を性的な目で見てます」と面と向かって口にするようなものだ。
美人なおねーさんならまだしも、俺がやるのはさすがにアウトだろう。
垂涎もののご馳走を前にずっと待てしてる状態なので、これもまた大変なストレスである。
ストレスのダブルパンチ。
俺の胃はいつまで持ってくれるだろうか。
そして、若といるとき顔だけを見て喋るように気をつけているから気づけたことがある。
最近若のご機嫌ななめっぷりがヤバい。
初めのうちは笑顔で不機嫌だったのが、日を追うにつれ口角が下がって今や立派なへの字口。
ムスッとしてサングラスの向こう側から俺を睨んで結局何も言わずに舌打ちする若が何考えてるかわからなくてめちゃくちゃ怖い。
まさか俺のせいってわけじゃないよなぁ。
何もしてないし。
いや、したけど。
したけどそれはもう許されてるはずだし。
……なんか疲れた。
今度休暇もらってヒューマンショップに行ってみよう。
俺は今とっても、誰かの膝枕で眠りたい気分だ。