「パウリーってさァ、いっつも破廉恥破廉恥言ってるけど女に興味ねェの?ホモなの?」 「ホっ……!誰がホモだ!」 「違うの?」 ちげェよ馬鹿!と叫ぶパウリーにへェ、と笑いながら耳元に唇を寄せる。 「そっかァ、 残念」 ねっとりとした囁きに「は、」と言葉を失うパウリー。 とん、と身体を押して距離を取りにんまり唇を吊りあげれば、耳を押さえて呆然としていたパウリーは一拍置いて顔を真っ赤に染め上げ、金魚のように口をパクつかせた。 *** 「……ってことが昔あってさァ。それ以来おれ、パウリーにホモだと思われてるらしいんだわ」 「あー……なるほどのう……」 汗をかいて上着を脱いだり男同士で肩を組んだり同じコップから水を飲んだり。 他の誰かなら気にも留めないくせにアルバがそれをしたときに限って「破廉恥!」と叫び出すパウリーに何かあるのかと疑問を感じたカクがそれとなくアルバに尋ねたところ、返ってきたのはそんな微妙な思い出話だった。 それだけでというかそれならばというか、普通ならすぐに冗談だと気づきそうなものだがアルバは妙な色気がある男だし、相手はあの初心すぎるパウリーだから仕方ないといえば仕方ない、と思えなくもないかもしれない。 まあ、どちらにしろおかしな誤解で毎日のように破廉恥呼ばわりされるアルバにとっては災難な話に違いないだろう。 「わしから誤解じゃと言うておいてやろうか?」 「あはは、カクはいい子だなァ」 「わっ!?こらアルバ、やめんか!」 暇つぶしに頭を突っ込んでみるのも悪くないという言葉の裏の考えに気づいているのかいないのか、屈託のない笑い声をあげながらカクのキャップを奪いとったアルバが頭を掴むようにして短い金髪をわしわしと撫でまわす。 カクが僅かな違和感に気づいて動きを止めたのは、完全な子供扱いに顔を顰め腕から逃れようと身を捩った正にその瞬間だった。 「……おいアルバ」 「どうしたカク」 「お前が男好きだと思われとるとして、なんで絡まれとるだけのわしがパウリーに睨まれるんじゃ?」 「そりゃあ――おれのこと、意識しちゃったからだろ?」 可愛いよなァ、といやらしい笑みを浮かべるアルバを見てカクはすぐさま理解した。 アルバはまごうこと無きホモであり、災難なのは間違いなくパウリーのほうであると。 |