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昔から見聞色の覇気が強く、まばたきや呼吸と同じように人の心の『声』を聴くことができた。
おかげで両親にすら疎まれ恐れられ挙句海賊船に奴隷として売り払われるという散々な幼少期を送るはめになったが、それでもおれは自分の持つこの力が嫌いではなかった。
なにせ人間の内側に秘められた『声』を聴くのは子供心にもとても楽しいことだったし、それを乱して引っかき回すのは何にも代え難い、最高に面白い遊びなのだから。

***

さて、所詮餓鬼だと油断した海賊の隙をついて逃走した先で海軍に保護され、色々と鍛えられて立派な海兵さんになったおれは職場である海軍本部で最高の玩具を発見した。
X・ドレーク。
強くて真面目で誠実な海兵の鏡とも言うべき男。
それが同性であるおれに焦がれ、懸想しはじめていると知ったときには面白すぎて笑いが止まらなくなってしまった。
言葉と態度で煽って逃げられないよう深みに嵌め、特別扱いしながら男同士の関係に否定的な言葉を吐いてやれば、真面目さと誠実さが完全な仇となったドレークは己の道ならぬ恋情に恐怖し『好きだ苦しい助けて嫌だ駄目だ愛してるごめんなさい助けてアルバごめんなさいごめんなさい』と幼い子供のように赦しを乞う。
誰より大きく『声』を発しているくせ人前ではそれをおくびにも出さず何食わぬ顔で平然としているものだから、そのギャップにおれはすっかり参ってしまった。
もっといじめて執着させて、おれへの恋情と罪悪感で精神を押し潰してやりたい。
この激しい感情がおれなりの愛だとすればおれとドレークは相思相愛ということになるんだろう。
なんだか擽ったくてにやにやとだらしない表情を浮かべるおれに、隣を歩くドレークが「何かいいことでもあったのか?」と尋ねてきた。
お前にだけ教えてやるよ、なんて上から目線の内緒話にも喜色を滲ませるドレークにぞくぞくが止まらない。

「実はな、おれーー生まれて初めて好きな子ができたんだ」

満面の笑みで教えてやった瞬間の絶望の『声』ときたら!
やっぱりドレークは最高だ!