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脱出条件を理解した瞬間ああこれはすぐにでも殴られるだろうな、と思った。
なにせサボはおれに対して容赦がない。
好きだと言えば殴られ可愛いと言えば蹴られ、愛してると言えば頭を鷲掴みにしてギリギリと締め上げられる。
ちなみにおれの扱いがそんななのはあからさまな拒絶に懲りもしないで毎日毎日馬鹿みたいに告白し続けているのが原因なので完全な自業自得だ。
サボだって今更鬱陶しいおれの顔面を殴ることくらい何の抵抗もないだろう。
そう考えて衝撃に備えるが、しかし瞼を閉じ歯を食いしばるおれの予想に反し、十秒以上が経過してもサボから拳が飛んでくることはなかった。

「ーーんで、そんな、普通に殴られようとしてるんだよ」
「……サボ?」

震える声を不思議に思ってゆっくり目を開くと、サボはなぜか傷ついたように顔を歪ませながらじっとこちらを見つめていた。
慌てて「どうした、大丈夫か?何が嫌だったんだ」と詰め寄ると「お前が殴られて当然みたいな顔するからだろ!」と頭を叩かれ、えっ、と瞠目する。
指摘された通りおれが殴られるのが当然だと思っているのだが、何かいけなかっただろうか。
裏で情報管理するのが主な仕事とはいえおれも革命軍の端くれ。
総参謀長であるサボには到底及ばないながら、それなりの覇気は扱えるのだ。
きちんと構えてさえいればサボの全力にだってギリギリ耐えることくらいは出来るはずである。

「ッなに『死ななきゃ問題ない』みたいな顔してんだ馬鹿!戦力差からしてお前がおれを殴る方が絶対に被害が少ないだろうが!」
「えっ、いや、そう思ってるのは確かだけどそれ以前におれ好きなやつの顔面全力で殴るとか絶対無理だからね?サボがおれのこと殴ってくれなきゃこの部屋出られねェよ?」
「おれだって無理だバカヤロウ!」

カッとなったらしいサボに胸倉をつかまれて頬を殴り飛ばされる、が、扉は開かない。
今のセリフってつまりおれのことが好きだから全力で殴れないってことなのかとかこれまでの暴力はかなり手加減された上での照れ隠しだったのかとか色々思うところはあるけどノーガード状態の顔面を不意打ちで殴るのは勘弁してほしかった。
全力なわけでもないのに一撃でノックアウトとか、おれ、かっこわる、