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「眠れない?不眠症ってことか?そういうことはもっと早く言えよ、そしたらおれがすぐ治してやったのに。あのな、ここだけの話おれと一緒に眠るとどれだけ寝つきの悪いやつでも百パーセント絶対に熟睡できるんだ。体温と匂いと心臓のリズムが絶妙らしい。あ?なんだ、信じてないのか?言っとくけどオヤジのお墨付きだぜ?」

そんな馬鹿げた嘘を自信満々に言い切って渋るマルコをやたらとふかふかしたベッドに引き込んだのは『熟睡しないと出られない』という脱出条件を知って少なくとも隊長に就任して以来熟睡など一度もしたことがないと不安げに顔を歪めていたマルコの緊張をほぐしリラックスさせるためだった。
そこに片思いの相手と密室で同衾することへの下心が一切なかったと言えば嘘になるが少なくとも手を出そうなんて不埒なことは考えていなかったし、おれの言葉が偽薬代わりになってマルコが眠ればすぐにでもベッドを出て床に転がるなり座って壁にもたれるなりして離れて眠るつもりだったのだ。
それが、信憑性を高めるために『オヤジのお墨付き』なんて言葉を使ったのが良かったのか悪かったのか、おれの言葉を信じ切ったマルコにガタイのいい男二人でも多少余裕のあるベッドの中でぴたりと密着され、硬いだの汗臭いだのという文句の合間に「でも、悪くねェよい」と小声でデレを挟まれただでさえ興奮で遠のいていた眠気が吹っ飛んだ。
しかもようやくマルコが寝息を立て始めて予定通りベッドから出ていこうとしたら何でだか服の裾をしっかり掴まれてるわ手を外したらむずがって魘されはじめるわ、もう。
うう、という苦しそうなマルコの呻き声に、真顔のまま中途半端に浮かせていた身体をゆっくりと横たえる。
探り探り伸ばされた手がおれの服を掴むとマルコの眉間の皺は安心したようにすぅっとほどけていった。

どうしよう。
おれ、熟睡とか絶対無理だ。