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「仕事しないと出られないって……なんなんですかこの不思議空間……!」
「あー……まあ、あれだ。とりあえず昼寝してから考えるわ」
「なんでこの状況で一旦サボりを挟むんです!?後回しにしないでさっさと終わらせてくださいよ!」

正論を喚きながらアイマスクを引き上げるとクザン大将が面倒くさそうに瞑りかけていた目を開いた。
そんな責めるような視線を向けられても困る。
なにせ海軍最高戦力の攻撃でも崩れない理不尽な造りのこの部屋はどうやら大将青雉の執務室を模しているようで、机に置かれた書類の束も全てクザン大将のものなのだ。
つまり、ここに拘束されている限りおれは自分の仕事に取り掛かることができない。
今日が提出期限の報告書だってあるというのにとんでもない事態である。

「……おれァ急ぎの仕事は抱えてねェし、頑張るメリットないじゃない」
「大将、おれ仕事ってメリットで頑張るものじゃないと思うんですよね」
「へェ、そりゃ立派な考えだ」

言外に「おれは違うけど」という否定を滲ませて首を竦めたクザン大将に「じゃあどうしたら仕事してくれるんですか」と渋々取引を持ちかけると、大将は少し驚いたように目を丸くした。

「あー……じゃあ」

なにか後ろめたいことでも考えているのかうろうろと視線を彷徨わせて言葉に詰まったあと「メシ、付き合ってよ」と口にした大将に今度はおれが目を見開く。
「奢れってことですか?」「いや、別にそういうわけじゃねェんだけど」。
じゃあ何でメシなんか。
おれとメシを食うことに、いったい何のメリットがあるっていうんだ。
大変な要求をしてしまったと言わんばかりの不安げな表情で目を逸らしている大将が不思議でひっそりと首をかしげる。
まあ、何にせよこの状況でおれが選べる道は一つだけなのだけれど。