一分、すなわち六十秒で終わるお手軽簡単チャレンジに閉じ込めた意味があんのかよと笑ってもう一時間。 一分どころか目を合わせてものの十秒で発火するエースに何度も前髪を焦がされたおれは、なんかもう無理かもしれんと悟りはじめていた。 前々からなんとなく気づいてはいたんだ。 他の家族とはしっかり視線を合わせて喋るし敵には堂々とメンチを切るエースが、おれに対してだけやたらと目を泳がせるってことに。 それでも決定的なところで知らぬふりをしていたのはおれとエースの間に男同士であることだとか年齢が倍ほど離れていることだとか色々と面倒な問題が散在していたからで、はっきり理解してしまったらお互い得になるどころか損しかしないその面倒な道を選んでしまう確信があったからで、それなのにわざわざ目を逸らしていた現実を眼前に突き付けてくるこの部屋の脱出条件におれは頭を抱えてため息をついた。 「あ……ごめ、お、おれ、今度こそ頑張るから!だからもう一回……もう一回、なっ?」 赤くなったり青くなったりして部屋の隅っこでぷるぷる震えていたエースがおれの溜息を聞いて燃えちまわないように絶対頑張るからと、失望しないでくれと懇願してくる。 こんなのもう、どう考えても無理だろうが。 可愛すぎんだよクソッタレ。 |