「つまり、一生ここから出られないと」 絶望感で頭を抱えながら呟いたおれに隣から忌々しげな視線が突き刺さるが、だってそうだろう。 おれが普段から鬱陶しいくらいにクロコダイルを褒めまくっているのに対しクロコダイルは絶対におれを褒めない。 それどころか今みたいに顔を歪め何かにつけて罵倒してくるばかりなのだから、この部屋とクロコダイルの相性は間違いなく最悪である。 「そういうつれないところも気位の高い猫みたいで可愛いんだけどさ」 「……ふざけたことを抜かすな、気色悪ィ」 ほらまた、とは言わないがやはりクロコダイルからおれの好きなところを聞きだすのは無理がありそうだ。 しかし『お互い』という指示の通りおれだけが言うのでは駄目らしく、開く様子のない扉に溜息を吐いてクロコダイルの額に浮いた青筋をそっと撫でる。 「クロコダイルはなんでそんなにおれに厳しいんだろうなァ」 「テメェの言動を思い返してみりゃァわかるんじゃねェか?」 「おれは感じたままを口にして思った通りに行動してるだけだよ」 クロコダイルが呆れたように眉を顰め「本当に頭のおかしい野郎だ」と吐き捨てると同時、ギギッという音がして木製の扉がひとりでに開いた。 どうして。 困惑からそう呟きかけて目を見開く。 隣のなんとも苦々しい表情は、見たこともないほど赤く染まっていた。 |