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*死ネタ


「お前ってほんと最悪だな」

理解できねェし、したくもねェ。
そう言って顔を目一杯顰め、中指を立て、ときに殴りあいの喧嘩をしても絶対にサカズキの傍から離れようとしない男がいた。
何故かと理由を問うたら顔と身体が好みだからだと返してきた糞のような男だ。
そんな糞のような男は、あの戦争の日、白ひげの攻撃からサカズキを庇って死んだ。
わけがわからなかった。
あの保身と日和見を好む男が命を賭してまでサカズキを庇う理由は一体なんだったのか。
いつかのように問おうにも、きっとサカズキが想像もできないような最低な理由を口にするはずだった糞のような男はもうここにはいない。
サカズキが何かに煮詰まるたびに己の好みだという身体を抱き、顔中に唇を落とし、サカズキが寝入るまで髪を梳いて翌朝にはまた隣で中指を立てていた、あの糞のような男は。
アルバは、もう。

釈然としない思いのまま遺品を整理してると、一冊の本の隙間から古びた写真が落ちてきた。
まだ青さの残る二人がたまたま一枚の中に収まっているだけのピンぼけした写真だ。
比較的まともに写っているサカズキはともかく、見切れてた上に半目になっているアルバは最早顔を判別するのすら難しい有様である。
こんな写真を何十年も残しているなど、あの男はやはり馬鹿だったに違いない。
下品で、最低で、糞で、本当に救いようのない大馬鹿だ。

考えながら、ぽたり、ぽたりと音が鳴る。

「……アルバ、」

震える声の理由も、写真に落ちた水滴の理由も、問える相手はもういない。