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二人きりの空間、重い沈黙に耐え切れず足早に自室に戻ったマルコはふと壁にかけられた小さな鏡に向かって笑みを作ると観察するようにじっとそれをのぞき込んだ。
唇をつりあげて無理やり笑顔を作っているため多少のぎこちなさは否めないが、垂れた目じりもそこに出来た笑い皺もそう悪いものではないと思う。
少なくとも眠たげな半眼のせいで冷たい印象を与えがちな普段の表情よりはずっと親しみが持てそうである。
だが、それだけだ。
わかっていたことだがマルコがどれだけ意識して微笑んだってせいぜいがその程度で、どう頑張ったって、どこからどう見たって鏡の自分はちっとも可愛くは映らない。
アルバの言っていたことは間違いなく正しい。
マルコという男は可愛くない。
容姿も、性格も、アルバに対する態度は特に。
しかしそれがどうしても納得できず、マルコは癖のように寄った眉間の皺を揉みほぐすように指で押さえて溜息を吐いた。
「マルコはかわいくないよなァと思って」
今まさに耳元で囁かれているかのようにまざまざと脳裏に蘇るアルバの声が煩わしい。
そんな、自分でもわかっていることを今更指摘されて、どうして一々傷つかなければならないのか。

「……おれだって、可愛くなれるもんなら、」

我知らず漏れた言葉に鏡の中の顔が歪む。
なんのことはない。
元々かわいくない男の顔が一層かわいくなくなっただけの話だ。
見たくない現実から目を背けるように、マルコは外した鏡をぽいと床に放り投げた。