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「#幼馴染」のBL小説を読む
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自分より強い男を「かわいい」と表現するのはどうかと思うが、それでもやっぱり強くてかわいい男というのは現実として存在する。
家族の中で挙げるなら筆頭はハルタだ。
やつはかわいい。
文句なしにかわいい。
初めて会ったときからなぜかまったく変化のない少年じみた容姿もさることながら、普段は容赦なく呼び捨てにしているくせに何かをねだるときだけ「おにいちゃん」と呼んで甘えてくるそのあざとさが小悪魔チックで何よりかわいい。
だからといって全てのおねだりを聞いてやるというわけではないのだが、以前甘えモードのハルタに対するときだけ猫なで声になっていると指摘されたこともあるため無意識の贔屓は否定できない。
見た目美人で性格男前なイゾウも実はおれ的かわいい男の一人だ。
本人に言うと烈火のごとく怒るだろうが、隙がないと見せかけてたまに信じられないようなうっかりをやらかすというギャップがものすごくかわいいと思う。
この間、唇に紅を乗せ髪もしっかり整えたうえでよれよれの寝巻のまま部屋から出てきたときなんかもう本当に撫でくりまわしてやりたい衝動を抑えるのに必死だった。
指摘したら眉間に銃口を突きつけられて「言いふらしたりしたらどうなるかわかってんだろうな…?」とドスの効いた声で脅されたものの、完璧に仕上がった面と寝間着の組み合わせだとそれすらかわいく思えるから不思議だ。
サッチも、あんな馬鹿っぽい髪形のオッサンだが料理を褒めたら「おれが作ったんだから美味いのは当然だろ」とか言いながら耳まで真っ赤にしてニヤけるのを我慢していたりして、そういうところはまあ、かわいいと言えなくもない、かもしれない。
見た目があれなのでかなり微妙なラインだが。

ーーしかし。

「……なに見てんだよい、鬱陶しい」

じろりとこちらを睨み付けてくる、どこをどうとってもかわいさゼロの男『不死鳥のマルコ』に向け、はあと思い切り息を吐く。
眉間のしわを深めながら再度「なんだよい」と問われたため「マルコはかわいくないよなァと思って」と素直に答えると無言で顔をしかめられた。

「けなしてるわけじゃねェぞ。冷静だし頼りになるし同じ男として見習いたいくらい格好いいけど、かわいいってのとは違うよなってだけだ」
「…………別に、お前にどう思われてるかなんざ興味ねェよい」

至極嫌そうな表情を浮かべてから顔を背けたマルコに倣い、そりゃそうだわなと考えつつおれも視線を逸らす。
昔から格好よくて、昔からかわいくなくて、昔からおれのことを嫌っているマルコ。
そんなマルコのことが他とは比べ物にならないくらいかわいく見えるおれの目は、多分もうどんな名医でも施しようがないくらい腐りきっているに違いなかった。