仕事仕事また仕事。 どこから湧いてくるのか不思議になるほど終わりの見えない面倒な仕事の数々は、全て我らが大将であるサカズキがおれを指名して寄越してくるものだ。 いくら年度が変わって色々あるとはいえこの仕事量はひどい、酷すぎる。 「なあおいサカズキ、いい加減にしてくんねェかなァ」 やってられるかと机の上に雑に整えた報告書を投げ置きながら愚痴を漏らすと、ちらりとこちらを見やったサカズキが静かな声で「気になる奴とやらに会えんのがそんなに不満か」と返してきた。 その言葉に眉を寄せて、そういえばエイプリルフールにかこつけてそんな嘘をついたなと思い出す。 サカズキの反応が知りたくて「最近気になる奴ができたんだ」と言ってはみたものの半ば予想していた通り「ほうか」と淡白な態度を取られて見事失敗に終わったため、こうして話題に出るまですっかり忘れてしまっていた。 「気になる奴ってのは、ありゃあ嘘だ。あの日エイプリルフールだったろ」 「……なんじゃと?」 「まあお前がアホみたいに仕事まわしてくるせいで片思い拗らせてる相手とは毎日顔合わせられてるけどな。嬉しいっちゃ嬉しいけどそれにしたって忙しすぎだ。そろそろ家に帰してくれ」 「な、」 中途半端に口を開いたサカズキがなにやら呆然としたような、形容しがたい表情でこちらを見つめてくる。 しばらくして紡がれた「海兵か」という問いに「お前だよ」とだけでも返せる勇気があれば、こんな遠回りはしていないというのに。 |