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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

「お前のそれはあれかな?喉の鳴らし過ぎかな?ゴロゴロ言い過ぎて声帯痛めちゃったとか?」
「死ね」
「ごめんね?怒らないで?」

あまりのことに驚いてテンションが上がってしまったおれを冷たく罵倒したルッチの声は、殺気を滲ませる恐ろしい姿すらいっそ哀れに感じるくらいガラガラに嗄れ果てていた。
しわがれた老人のような声を発する喉にそっと手を当てるとルッチのはっきりとした喉仏がせりあがるように動く。
熱い。
想像以上に結構な熱だ。

「しんどいときにからかってごめんね?飲み物用意してあげるからベッドに入って休んでおいで」

そう言って室内に招き入れると舌打ち一つで上がり込んでくるルッチは、きっと見た目からはわからないけれど喉と熱以外にも相当な不調が出ているのだろう。
意地っ張りなルッチがおれの部屋を自らの意志で訪れるのはそういうときだけだと昔から相場が決まっている。
そう。
ルッチは体調不良のときは、昔から、必ず、おれの部屋にやってくるのだ。

「……そういえば、猫が死ぬ前に姿を消すのは弱った身体を回復させるために安全な場所に隠れて、回復しきれずそのまま死んでしまうからなんだってね?」

ちらりとこちらを向いたルッチの、苦虫を噛み潰したような、決まりの悪そうな表情に自分の考えが正しいことを確信して笑みを漏らす。
お前はちゃんと回復するまでおれが面倒見てあげるから安心しなよ、と汗で張り付いた髪を撫でると嗄れた喉が何かを諦めるようにごろごろと鳴った。