「そういえばコラソン、お前、もしかして喋れるんじゃないか?」 まるで世間話のように軽い様子でかけられた言葉に、コラソンは珍しくドジをしないで飲み進められていた紅茶をブッと勢いよく噴き出した。 飲み込みかけの紅茶が気管に入って噎せそうになるがそれどころではない。 バレたのか。 いやまさか、気取られるような真似はしていないはずだ。 「そりゃァ、どういう意味だ?アルバ」 紅茶で濡れた顔を拭う間もなく、笑いながら問いかけるドフラミンゴに焦りで噴き出した汗が一筋、つっと額を伝う。 アルバがどうして『喋れないコラソン』に疑念を抱いたのかは知らないが、とにかく誤魔化さなければ。 下手をすれば最悪命はない。 けれどそう考えてゴクリと唾を飲んだコラソンの緊張は、次の瞬間ものの見事に霧散した。 「ああ、こいつ前々から寝ぼけると絶対に口ぱくぱくして何か話しかけようとしてくるんですよ。喋り方は忘れてないみたいだから、声帯がやられてるわけじゃないならちょっとしたキッカケで喋れるようになるんじゃないかと思って」 何言ってるのかいい加減気になるから発声トレーニングでもさせようと思うんですけど、と語るアルバはどうやら正真正銘ただの世間話をしているようだ。 人騒がせなと胸を撫で下ろし、しかし自分が毎回寝ぼけてアルバに話しかけようとしているという部分は聞き捨てならないとペンを握った。 この話が本当なら、いつかドジって本当に喋りかけてしまう前にアルバと距離を置かないと危険だ。 『こいつをよこすのはやめろ』 そう書いたメモをドフラミンゴに向けてかざすと「どうして」と返されたので、また走り書きで『ねおきにヤロウのつらなんて みたくない』と書いてみせる。 「フッフッフ!確かにそうだ!だが、アルバは別じゃねェか?なあ、コラソン?」 楽しげに笑うドフラミンゴの言葉の意味は、考えたくもなかった。 |