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「おれァ焼き鳥よりドフィのぼんじりが食いてェなァ」

ひきしまってて旨そうだ。
そう言って歯に挟んだ肉を串から引き抜きつつ露骨にいやらしい視線をむけると、ドフィは嫌がるでもなくただ楽しそうにフッフッフと笑い声を漏らした。
サングラスに隠された目がどんな色を宿しているのかはわからないが、少なくとも躊躇うような素振りはない。

「食いてェなら食ってみるか?」
「さて、どうするかね。食ってみてェが生憎マナーには疎いもんで」
「フフッ……気にしねェよ。大切なのはマナーより美味しく食べることだ」

そうだろう?と首に腕をかけてくるドフィの色気を前に思わずブフッと噴き出して降参だと両手をあげる。
舞台役者すら霞むドフィの素晴らしい演技力に全力で拍手したい気分だ。

「まったく、ドフィは流石だなァ。男のあしらい方まで完璧たァ恐れ入るぜ」
「アルバ、どういうこと?」

降参ポーズのまま笑うおれに紅茶を用意していた少女が可愛らしく首を傾げて尋ねてきたので「男ってのは誘い文句にあんまりノリノリで返されると逆に萎える生き物なんだよ」と優しく色事の駆け引きを説いてやった。
どうせ意味なんざわかっちゃいないだろうが将来のために覚えておいて損はないはずだ。
惚れた男に誘われたらまずはちょっとだけ渋れと無垢な少女にあれこれ教え込む後ろでドフィがわなわなと震えていたことなど知る由もなく、おれは残るぼんじりの串に舌鼓を打った。