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「わしのことが気に食わんのならつべこべ言わずに別れりゃァええ!誰も引き留めやせんわ!」

そう叫んだ直後、今までの顰め面から一転表情を消して「そうか、じゃあなサカズキ」と事も無げに言い放ちくるりと背を向けたアルバにサカズキは目を見開いた。
アルバの愛情深さは長年それを受け取り続けてきたサカズキが一番よく知っている。
だからこそ意見がぶつかったときにはこういえばアルバは折れるものと、一片の曇りもなく、心の底から確信していたのだ。
アルバに対してサカズキが態度を取り繕ったことなど一度もないし付き合いだって数年やそこらの話ではない。
サカズキの過激な性格も一方的な物言いも全ては今更のことで、愛想を尽かされる原因になるとは到底思えなかった。
しかしそれならばなぜアルバは今サカズキに背中を向けて扉を開き部屋から出ていこうとしているのか。
そうか、とは。
じゃあな、とは、いったい。
心臓がバクバクと嫌な音を立てる。
混乱でひりつく喉からどうにか吐き出した「おい」という短い呼びかけも、知らぬ間に伸ばしかけたまま固まった腕も既に扉の向こうに消えたアルバには届きようがなく、サカズキは広い部屋の中ただ一人呆然と立ち尽くしていた。









「はァ?馬鹿言え、誰も別れちゃいねェよ。おれがサカズキのこと大好きなの知ってるだろ?そりゃあどうしても譲れないことだったから折れなかったけど、だからって本当に別れる必要なんてどこにもないじゃないか。え、なに、サカズキは別れたつもりでいるだって?なんだそれ、酷い奴だなァ、別れるなんて一言も言ってねェぞおれは。ああ、わかってるよ、そんなに急かさなくてもすぐに行くって…………泣くほど後悔するなら言わなきゃいいのになァ、まったく」