終業間近発覚した書類の不備による残業に次ぐ残業をこなし、ようやく帰宅したと思ったら扉の前にはへべれけ状態の友人兼上官殿が蹲っていた。 ついイラっとしてしまったのは仕方ないことだろう。 というか両膝を抱えて小さくなっているものの元がデカいせいで普通にデカい。 早いところなんとかしなければ、ご近所さんに見つかったら通報待った無しの不審者具合だ。 「おいクザン」 「あ、アルバ……?おかえりー」 「おう、ただいま。で、お前はなんでここにいるんだ。なにか用事でも?」 「そうそう、なんか、あれだ……あー、なんだったっけ……?」 へにゃりと酔っぱらいらしい気の抜けた笑みを浮かべたクザンにため息を吐き、肩を貸して立ち上がらせる。 どうせこの様子では一人で帰らせるのは無理だろう。 おれのベッドじゃクザンは入りきらないし来客用の布団なんか持ってないから床に転がすことになるが、それでも地面で寝るよりはマシなはずだ。 「アルバー……お前んちの床ふわふわしてて歩きにくいんだけど」 「してねェよ、ほら真っ直ぐ立て」 「んー……」 千鳥足のクザンをなんとか家に運び込んでソファに降ろすとどっと疲れが襲ってきた。 自分より体格のいい酔っぱらいの介抱なんて、間違っても残業明けにするものではない。 相手がクザンでなければ途中でキレて放り出しているところである。 「……なあクザン、今日は誰と飲んでたんだ?」 弁えた飲み方を身に着けているはずのクザンがここまで酔うなんて珍しい。 そう思って水を用意しながら尋ねると、ソファに沈み込んでクッションに額を擦り付けていたクザンはへらへら笑いながら「ガープさんがおごってくれた」とこの状況の主犯と思われる人物の名前を教えてくれた。 なるほどガープ中将か。 あの人なら、まあ納得だ。 「無理やり飲まされたのか?」 「や、じゃなくて、あー…なんかほら、好きな子とか結婚とか?そーゆー話しになって、それでアルバが、」 「おれ?」 「ガープさん、アルバは好きな子いるって言ってたって……それで……なん、なんか、おれ、それ聞いたらすごい嫌んなって……だから、じ、自分で、飲んだ」 「……そう、か」 最初は笑っていたはずなのに途中から声が小さくなったっ思ったらクザンは話しながらぽろぽろと涙を流していた。 苦しげな泣きっ面にその辺にあったタオルを押し付け、馬鹿だなァと苦笑を漏らす。 こんな状況でそんな期待を持たせるようなことを言うなんて、お前は本当に馬鹿なやつだよ、クザン。 |