不死鳥の炎はほんの少しの日焼けすら火傷とみなして治してしまうようで、マルコの肌はいつだってまろやかな白色をしている。 きめ細やかでシミの一つもない、海賊らしいがっしりとした体躯にはどうにも不釣合いな美しい肌。 その肌に痕をつける高揚感は新雪に足跡を残すときに限りなく近い。 「マールコ」 「な、……ッアルバ!」 自室に入ろうとドアノブに手をかけたマルコを背後から抱きすくめ、襟を剥いて首筋にかぶりつく。 水にインクを垂らしたように一瞬で赤く染まった肌を噛んだり舐めたり吸いついたり好き勝手やっていると硬直が解けたマルコに「なにやってんだよい!」と怒鳴られた。 「毎度毎度、なにが楽しくてこんなことすんだよい…!」 「いいじゃん別に。痕になったって能力使えば消えるだろ?」 そういう問題じゃねェよい、という低い声に笑み漏れるのはおれがマルコの気持ちを理解しているからに他ならない。 マルコはおれが抱き付いても本気で抵抗しないし、おれのつけたキスマークを「もう消した」と言いながら服の下に隠してできるだけ長く残そうとする。 恋人同士のような接触に期待して、しかしその行動の理由を知るのを恐れているマルコがおれをどう想っているかなど想像に易かった。 「なあマルコ、お前のことが好きだからやってるんだって言ったらどうする?」 「……おれじゃなくて、おれの肌が、だろ」 「そう思うか?」 苦々しい様子のマルコの首に再度強く吸い付いてくっきりとしたキスマークをつける。 確かにおれは赤い痕がよく映えるこの白い肌が大好きだ。 でもそれ以上に、おれのキスマークを残すために能力の使用を控えて日に焼けたマルコの肌は何より美しく愛らしいとも思っているのである。 「おれはお前を愛してるよ、マルコ」 誤解を与える隙のない完全な告白をした直後、キスマークがわからなくなるくらい真っ赤になったマルコから蒼い炎が燃えあがり今しがたつけたばかりの痕が綺麗さっぱり消えてしまった。 まあ消えたものは仕方ない。 マルコの返事を聞いた後で、もう一度しっかりつけなおすとしよう。 |