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「なんじゃルッチ、結局貰ってきたのか?」
「縁起が悪ィから返却は受け付けねェんだとよ」
「ああ、なるほど……それにしてもまあ似合わんのう」

無造作に机に置かれた可愛らしいブーケを見て笑うカクとパウリーを一睨みし無言で昼食を続ける。
白い花だけで作られた小ぶりのブーケが自身に不釣合いなのは百も承知だが、悪いのはおれではなく道を歩いていただけのおれに向かってブーケを飛ばしてきた花嫁の投擲の腕だ。
その場で捨てなかったのは潜入を行う上でターゲットに情に薄いという印象を持たれたくなかったからであって、部屋に持ち帰ったところで世話をするつもりもないためいずれ近いうちに枯れてしまうだろう。
しかるべき人間の手に渡れば大切に扱われたであろうことが容易に想像できるだけに、このブーケも運がなかったとしか言いようがない。

「ルッチ、ブーケ貰ったんだって?せっかくだし恋人にでもやれよ。女はそういうの喜ぶぞー」

ひょいと横から会話に入ってきたアルバにパウリーが「こんな変人に恋人なんているかよ」とハットリを指差してまた笑う。
別段何でもない会話がなぜか気になって箸を止めるとそれに気付いたカクが怪訝そうに目を瞬かせた。

「なんだルッチ、彼女いねェのか……せっかく男前なのに可哀想なヤツだなァ」

貰い遅れになったらおれが嫁にしてやろうかという冗談めいた言葉にピクリと小さく肩が動き、しまったとカクを見ればもとより丸い目が零れんばかりに見開かれて「どういうことだ」と訴えている。
やめてくれ。
おれだってこんな感情は知らなかったし、知りたくもなかった。