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「私をあなたの『特別』にしていただけませんか?」

もしアルバが初対面でそんな大それたセリフを吐かなければドフラミンゴがアルバという男を認識することは一生なかったに違いない。
なにせアルバは偶然羽休めに選んだちっぽけな島の、これまたちっぽけな喫茶店の店主にすぎないのだから。
世界を動かす立場のドフラミンゴと接点など持ち得るはずもない。
しかしアルバの淹れるコーヒーは意外にも舌に合い、暇潰しがてら二度三度と通ってやっているうちに、いつしかドフラミンゴはアルバ自身のことも『悪くない』と思うようになっていた。
常連といってもいいほど店に通い慣れたころにはアルバは既に間違いなくドフラミンゴの『特別』だったのだが、それから数年が経ったいまでも二人の関係は客と店主のままである。

全ては他ならぬアルバのせいで。

「ああドフラミンゴさん、いらっしゃい……おや、またご機嫌斜めですか」
「フッフッフッ!そうみてェだなァ。たった今から、おれはご機嫌斜めだ」

機嫌が悪くなる理由なんてわかりきっているだろうに、原因であるアルバは白々しく肩をすくめるとドフラミンゴの好む豆をゴリゴリと挽きはじめた。
ここで拗ねてみせても結果は同じ。
アルバは決してドフラミンゴを愛称で呼ぼうとしない。
強引に呼ばせようとしても「こっちの方が特別でしょう?」と意味深に笑うだけで、結局は何事もなかったかのようにドフラミンゴさんと呼んでくるのだ。
意味がわからない。
愛称より他人行儀な呼び方が特別なんて、そんなわけがないのに。

「はい、どうぞ」

コトリと置かれた小さな皿に「ガキじゃねェぞ」と口角を下げながらフォークを握る。
好意を受け取ろうとしないアルバに苛々するドフラミンゴの目の前に注文していないケーキが出されるのはいつものこと。
こんなもので誤魔化されるかと思うのも、怒りを持続させたまま最後の一口にたどり着けないのもいつものことだ。
ドフラミンゴが『特別』を手に入れる日は、まだ遠い。

***

すでに複数人が呼んでる愛称を呼ぶよりドフラミンゴに「愛称を呼ばせたい」と想われる唯一になりたい主人公。