この季節いかにも昼寝に最適そうな微風に揺れる大樹の木陰。 そこに大将青雉が転がっていた。 休憩をとるにしては中途半端過ぎるこの時間、まず間違いなくサボりだろう。 上官からの捜索命令も受けていない以上大将のサボり現場など見なかったことにして立ち去るのが一番だ。 そう思いつつも足はなぜか真っ直ぐに大将のもとへ向かっていった。 ざくざくと芝を踏みしめる音がやけに大きく聞こえる。 「青キジ殿」 一度小さく声をかけるも、ご丁寧にアイマスクまでつけている大将が目覚める気配はない。 熟睡しているのか半開きの口からは静かな寝息が漏れるばかりだ。 「……クザンさん」 先程よりもっと小さい、木の葉のざわめきにかき消されそうな声が幾度となく頭の中で繰り返し呼んだ名前を紡ぐ。 分厚い唇に吸い寄せられるように口づけを落とし、すぐさま我に返って首を振った。 魔が差した。 こんな邪な感情、伝える気など毛頭ないというのに。 大将の寝息は乱れず続いている。 しかし今にも起き上がって気持ち悪いと詰られるのではと思い、ゾッとした。 心なしか周囲の空気まで温度を下げた気がして逃げるように太陽の下に走り出る。 そのまま足早にその場を去った後、誰も見るもののいなくなった木陰のなか両腕で顔を隠して意味不明な呻き声をあげた一人の男が溢れ出た冷気で大樹を氷漬けにしたことは誰も知らない。 |