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ひと月ぶりにシッケアールの城を訪れたら恋人が椅子の上で尊大にふんぞり返ったまま眠りこけていた。
寝るならベッドに行けといつも言っているのに、と呆れつつ幸せそうな寝顔を邪魔するのも酷だとわざわざ抱いて寝所に連れていってやったら一時間後起きてきた恋人ミホークは何やら大層な不機嫌面をしていて正直動揺を隠せない。
なんでだ。
別に悪いことしてねェだろ、俺。

「もしかして会わなかった間に俺のこと嫌いに、ッぐ……!」

想像しうる最悪の展開を口にしかけた瞬間この馬鹿がと言わんばかりに胸をど突かれた。
違うなら暴力に訴えるのではなく言葉で伝えてくれないだろうか。
手加減されているとはいえ大剣豪の一撃は一般人にはキツすぎるぞ。

「……なぜ起こさなかった」
「え?まあ、気持ちよさそうに寝てたしいい夢見てんだろうなァと思って」
「ぬしが傍にいるなら見る必要もない夢だ」

ピンとこない俺にしびれをきらしたのか腹立たしげな様子でミホークが語った不機嫌の理由に瞠目していると再度胸を叩かれた。
さっきと違い攻撃力皆無の甘えた拳。
鋭いままの、しかし格段に熱っぽい金色の瞳が真っ直ぐに俺を捉える。

「一時間無駄にした」

そう吐き捨てながら擦り寄ってくるミホークをベッドに連れていくのは、さすがに間違いじゃないと思いたい。