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*くっついた後の話

何かしてほしいことはないのかと尋ねたのは献身でもなんでもなくただおれが不安だったからだ。
アルバは「無理はしなくていい」と言ってくれるが、与えてもらうばかりで好意を伝えることすら儘ならない人間などいつ捨てられてもおかしくない。
だからせめてアルバの望みを叶えたかった。
アルバがおれにしてくれたように、アルバの欲しがるものを与えることができれば少しは喜んでもらえるんじゃないかと安易に考えた。

――その結果いまおれはアルバにチョコまみれの手を丁寧に舐めとられている。

バレンタインだから。
全部用意するから。
座ってるだけでいいから。
そんなふうに興奮した様子でガッツポーズをとるアルバに有無を言わさず押し切られてしまったが、わけがわからない。
こんなことをして何の意味があるっていうんだ。

「船長、チョコレートまだ結構ありますけど大丈夫ですか?嫌だったらちゃんと言ってくださいね」

そう言いながらも手を止めることなく服を脱がせてくるアルバの表情はとても楽しそうで、それなら一応おれの目論見は成功したことになるんだろうか。
顔が熱い。
溶けたチョコのついた刷毛がゆっくりと胸に近づいてくる。
優しいだけでないアルバの笑みに、ゴクリと喉が鳴った。