×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

「そんな硬い顔してちゃ駄目じゃねェかァ〜、わっしは『笑え』って言ったんだよォ〜?」
「……申し訳ありません」

一応謝ってはみるものの内心は理不尽な現状に対する戸惑いでいっぱいだ。
上司からいきなり呼び出しをくらったと思ったら「笑え」って、いじめか?
表情筋死んでることに定評があるおれに無茶振りするのはやめてもらいたい。
というか顎を掴んで威圧的な笑みを浮かべる黄猿殿の目の前で自然な笑顔を作れる奴なんかそうそういないだろう。
少なくともおれには無理だ。
難易度が高すぎる。

「クザンには見せたのに、わっしには見せられねェのかァい?」
「……クザン?」

苛々した様子の黄猿殿から出た大将であり同期の友人でもある男の名前に首を傾げ、直後この状況の原因はクザンらしいと理解して戦慄した。
まさかあいつ……いや、それしか考えられないあのクソッタレ。

「黄猿殿、青キジ殿がどう伝えたか知りませんが誤解です」
「誤解だってェ?」
「はい。おれはただ電伝虫片手に長い間悩んでいたのに最終的に光になって直接要件伝えに行ったところを少し微笑ましく思っただけで、悪意があって貴方を笑ったわけではありません」
「…………………うん?」

夜勤明けでちょっとテンションがおかしかったのも理由の一つだが、そこは黙っておいたほうが無難だろう。
黄猿殿を見てほのぼのとしていたときクザンが「あらら、お前って普通に笑えたのね」と失礼なことをぬかしていたから、きっとそれを面白おかしく脚色して話したに違いない。
どういう経緯であれ自分が笑われたことにいい気はしないだろうが少なくともこちらに貶めるような意図はなかったのだと力説すると黄猿殿も冷静になってくれたようだ。
半ば感情任せな行動をとったことが恥ずかしいのか耳が赤くなっている。
顎から手を離して俯きながら歯切れ悪くもごもご喋る黄猿殿がやけに可愛らしくてまた鉄面皮が緩んでしまった。
見られなくて本当によかったと思う。

ちなみに後でクザンを問い詰めたら「すごい優しい顔で笑う奴だって褒めただけ」だと言っていたけれどやけにニヤニヤしていたから嘘、もしくは何かを隠しているのだろう。
自転車黄色に塗り替えたうえにライトでピカピカさせて黄猿モデルにチェンジしてやるから泣いて喜べ。