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「あいつお前のこと気に入ってるから」という言葉に唆されて宴の際に鷹の目の酌をするようになったのは、まだ頭の腕が両方揃っていたころだった。
赤髪海賊団と鷹の目の遭遇なんて年に一度あるかないかの機会だからそう面倒なことではないのだが、とりあえず頭にはどこをどう見たら鷹の目がおれを気に入ってるように見えたのか小一時間問い詰めたい。
いつものことながら海を漂ってた棺船回収して宴の準備して樽一つ空けるまでほぼ無言だぞ。
話しかけてもまともな相槌すら打ってもらえないんだぞ。
これなら同格同士頭とサシで飲んでた方が鷹の目も絶対楽しいだろ。
そう思ってちらりと目を向けると、酒瓶を持って赤い髪を乱した頭がニカッと笑って手を振ってきた。
願ってもないチャンスだ。

「頭ァ!酒ならこっちにもあるから一緒に……、鷹の目?」

鷹の目の相手してください、とこちらへ招こうとした手を横からぐいと引っ張られる。
驚いて視線を落とすとそこには引いたおれの手にぐりぐり額を擦り付ける鷹の目の姿。
なんだ、せっかく頭を呼ぼうと思ったのに今回は随分と早いな。

「鷹の目、もう酔ったのか?」
「……酔っていない」
「酔っぱらいはみんなそう言うもんだ」

明らかに熱を持っている頬に掌を添え、しなだれかかってくる鷹の目を抱き寄せる。
酒のせいでだらりと弛緩した身体を持ち上げるのにも慣れたものだ。

「疲れが溜まってるんだろう。おれのベッド貸してやるから今日はもう休め」
「眠くない」
「横になってりゃそのうち眠れるさ」
「眠くない」

ぐずぐずと文句を言う鷹の目を肩に抱えて甲板を後にする。
気に入られているとは思えないが、こんなふうに酒に酔った無防備な姿を見せてくれるなら少なくとも嫌われてはいないのかもしれない。
そんなことを考えていたおれはいつも通り、こちらを指差して爆笑する頭にも普段となんら変わりない鋭い瞳で頭を睨む鷹の目にも全く気づくことなく平和に自室を目指したのだった。