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「でもドフィが天竜人のままだったらきっとおれたちは出会えてなかったんだよな」

酒の肴に話してやった己の過去。
それを聞いてしみじみとそう漏らしたアルバに、一拍の間の後で腹の底から笑いがこみあげてきた。

「フフ、フフフフフ!あー……なるほどなァ、アルバに会えないのは、そりゃ困る。ならあの父親にも少しは感謝しねェとなァ」
「あ、いや、別にドフィの苦労を肯定してるわけじゃないんだぞ!?ただおれはドフィと一緒にいられてよかったって違う違うドフィの不幸を喜んでるんでもなくてだな!」

手をぶんぶん振りながらああでもないこうでもないとしっくりくる言い回しを探していたアルバがついに言葉で伝えることを諦めて顔を寄せてきた。
酒の苦さにそぐわないガキのお遊びのような可愛らしいキス。
それでも満足してしまうのは裏の世界の人間のくせにどこまでも初心で誠実なアルバを理解しているがゆえだ。

「なァ、アルバ」
「なんだいドフィ」
「お前はおれが好きなんだろう?」

おれがジョーカーじゃなくても、七武海じゃなくても、国王じゃなくても、お前はおれのことが好きなんだよな?
馬鹿みたいな問いに「当たり前じゃないかドフィ」と微笑むアルバの頬に手を添え、そっと口づけた。
愛している。
愛されている。
それなのに信じられない。
信じきれない。
だって自分が天竜人でなくなったとたん掌を返した人間たちを、嘲りの声を、蔑みの目を。
絶対だと思っていた世界が崩れる瞬間を、おれは知っている。

「……おれはきっと、天竜人のままでだってお前を見つけてお前を好きになってた」
「!そうか……そうだな。ドフィが見つけてくれたなら、おれも天竜人のドフィに高嶺の花だと思いつつ恋したはずだ」

いやいや今だって随分な高嶺の花でこうしていられるのが夢みたいなんだがとまた慌てだしたアルバに笑みを浮かべながら内心で思う。
おれが今も無知な天竜人のままだったなら。
アルバを見つけ、好きになって、身分と権力を振りかざし何もかも奪い首輪をつけて奴隷にして閉じ込めて自分だけのものにできていたなら、おれとアルバはもっと幸せだったに違いない。

おれの父親はやはり、何度殺しても殺したりないクソ野郎だ。