「ドフィ、ドフィどうしたの?なんで怒ってるんだ?こっち向いてくれよドフィ、なにか悪いことしてしまったなら謝るから、ねぇ」 アルバは可愛い可愛い恋人であるドフラミンゴが何かしらの理由で拗ねてしまったとき、いつもそんな風に猫なで声で呼びかけながら飲み物を用意してみたりドフラミンゴの好む音楽をかけてみたりとあの手この手で機嫌を取ろうと試みる。 ドフラミンゴの不機嫌は大抵些細な嫉妬が原因であり、それはアルバがドフラミンゴに甲斐甲斐しく構うことによって解消できるものと知っているからだ。 だがそれを知っていてなお、今日のアルバはそうしなかった。 否。 しなかったのではなく、できなかった。 眠気と苛立ち、全身に錘を付けたような疲労感。 ここ最近続いた激務のせいで疲れ切った心身はアルバに何を考える間も与えず勝手に口を動かしてしまったのだ。 「いい加減にしてくれ、若」 瞬間、ドフラミンゴの動きがギシリと止まった。 意図せず零れ落ちた言葉に自分自身戸惑うアルバの前で、むすりと唇を引き結んでいたはずのドフラミンゴの表情がみるみるうちに歪んでいく。 目を丸くしながらサングラスに手を伸ばしたアルバがその奥に見たのは、潤んでいるというわけではないのに今にも涙がこぼれそうだと錯覚しそうなほどの絶望を宿した瞳。 ぞくり。 背筋を駆けのぼるそれが愛おしさであると認識してアルバは今までにないほど甘く、陶然と微笑んだ。 |