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- ナノ -

支払いは自分がと懐から財布を取り出すおれに目をパチクリさせたボルサリーノさんはなぜかそのまま店員さんにピン札を差し出して二人分の食事代を清算してしまった。
なんだの人マイペースにもほどがあるぞ……!

「ちょ、ちょっとボルサリーノさん!?」

あまりの自由っぷりに慄いている間にチップの受け渡しまで済ませてゆっくりと歩き始めたボルサリーノさんを慌てて追いかける。
隣に並んで「どうして」と非難の声をあげれば「払っちまったもんはしょうがないだろォ〜」と返ってくる罪悪感など欠片もない答え。
しょうがないって、おれは初めてのデートだから惚れ直してもらえるくらい完璧にエスコートするんだってはりきってたのに。

「ほらァ〜そんなに拗ねてないでェ。次のときは頼むからさァ〜」
「次のとき?」

どうしても納得いかなくて唇を尖らせていたおれはボルサリーノさんの言ったことを理解するのが遅れ、ついオウム返しに聞き返してしまった。
すると途端に強張るボルサリーノさんの横顔。

「……まさかデートが一回きりとは言わないよねェ」

奢られっぱなしはよくないよォ〜、なんて冗談めいたセリフに隠された真意に気付いておれは頬が熱くなるのを感じた。

「次のデートはおれ持ちで、その次はまたボルサリーノさんって意味であってます?」
「……うん。それで構わないかねェ」

返事の代わりに手をとると安心したように息を吐くボルサリーノさん。
まったく、そんな回りくどい誘いかたでなくとも、あなたが望むなら何度だって。