「妙なことに拘るやつじゃのう」 おれが払いますから、と腕を引くと面倒くさそうに一瞥して舌うちされた。 意見を聞く気など更々ないらしく財布をしまう素振りすらみせない。 それどころか先に出ちょれと手を振りほどかれ、おれはつい声を荒げた。 「サカズキさんは男心が全然わかってない!惚れた相手に金を使わせたくないのは当たり前のことでしょう!」 店内の視線が一気に集まったが気にしない、というか気にしてられない。 サカズキさんはもっとちゃんとおれに愛されていることを自覚するべきだ。 「聞いてるんですかサカズキさん!」 「……怒鳴らんでも聞こえちょるわ」 「なら支払いはおれが!」 「いらん、わしも男じゃけェ」 不快げに顔を歪めるサカズキさんに、まさか女扱いしてると思われたのかと慌てて弁解する。 「違いますサカズキさん、別に女扱いしてるんじゃなくてサカズキさんのこと好きだから大切にしたいだけなんです!」 そういう意味で言うちょらんと息を吐くサカズキさんに混乱するおれ。 どういう意味なのか聞いても教えてくれないし結局押し切られて会計を済まされてしまったし、今日のデートは散々だった。 |