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政府の人間との戦闘で傷ついた身体の療養中、質実剛健という言葉を人の形にしたような同僚が似合わない花を抱えて見舞いにきたのをからかってから知ったこと。
奴の生家は花屋を営んでいて、船大工という職を選んだ今でも花を愛でる気持ちにかわりはないらしい。
酒や煙草より花の一本でもあれば心が満たされるというのは、誕生日のたびに寒い懐に頭を悩ませ、まるで日常の延長みたいに酒や葉巻を押しつけていたおれにたいするあてつけか。
なんてやつだ、そんなことを言うならもう今年はなんにもやらねェからな。
そう思うのについつい花屋に目が行くのは、男の誕生日を目前にして珍しくギャンブルに勝ったからに他ならない。
艶やかなピンクの花が咲いた鉢は、さぞ持ち運びにくいだろう。
馬鹿馬鹿しいくらい丁寧で可愛らしいラッピングだって、あくまで嫌がらせなのだ。

なんでもないふうを装いながら渡したそれを見て男が真剣な顔で「本当にいいのか」と問い、わけがわからず瞠目するおれに「お前に期待したおれが馬鹿だった」と肩を落とした意味を理解するのはこれよりずっと先、ピロートークの最中のことだった。

(ベラドンナリリー:花言葉『わたしの裸を見て』)